日本語教師になるには?

2020年9月12日(土)
Category:コラム
日本語教師とは、外国人、または日本語を母語としない方を対象に日本語を専門的に教える仕事です。
日本語教師になるには、ただ単に日本語を話せる、日本語の知識がある、といったことだけでは不十分です。
日本語を知らない人たちに対して、日本語の話し方や書き方を教えるための理論や実際に教えるための技術を習得する必要があり、日本人ならば誰でもなれるというものではないのです。
日本語教師になるには資格が必要?
日本語教師になるための公的な資格は現時点ではありませんが、数年以内に日本語教師の国家資格の創設を目指し、議論が進められています。
先述のとおり、現時点で日本語教師になるための公的な資格はないものの、実際には日本語学校の中でも法務省告示校(日本語を学ぶ目的で、在留資格「留学」を取得した外国人を受け入れることが可能な日本語教育機関)で日本語教師として就職するためには、
- ・4年制大学を卒業し、かつ文化庁への届出が受理された420時間以上の日本語教師養成講座を修了していること
- ・大学または大学院で日本語教育を専攻し修了していること
- ・日本語教育能力検定試験に合格していること
この条件のいずれか(学校によっては複数)をクリアする必要があります。
法務省告示校の日本語学校以外でも、日本語教師の求人を募集している学校や、企業、機関はありますが、その多くがこの3つのいずれかまたは複数を応募資格の条件にしています。
日本語教師になるための3つの条件について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
日本語教師養成講座420時間以上のコースを修了する
日本語教師になるための1つめの条件は、文化庁届出受理済の日本語教師養成講座420時間以上のコースを修了することです。
特に、法務省告示校で日本語教師になるには、4年制大学を卒業したうえで、文化庁届出受理済の日本語教師養成講座420時間以上のコースを修了することが条件の1つとされています。
日本語教師になることを目指す人の多くが、知識と実技を総合的に学ぶことができる日本語教師養成講座420時間以上のコースで学ぶことを選択しています。
日本語教師養成講座420時間以上のコースの内容
日本語教師養成講座420時間以上のコースの学習内容は、文化庁に2000年に設置された「日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議」のなかでまとめられた調査研究報告「日本語教員養成について」が基準になっています。
この「日本語教員養成について」のなかで示された教育内容は、「社会・文化・地域」「言語と社会」「言語と心理」「言語と教育」「言語」の5分野とされています。
社会・文化・地域 | 世界と日本 |
異文化接触 | |
日本語教育の歴史と現状 | |
言語と社会 | 言語と社会の関係 |
言語使用と社会 | |
異文化コミュニケーションと社会 | |
言語と心理 | 言語理解の過程 |
言語習得・発達 | |
異文化理解と心理 | |
言語と教育 | 言語教育法・実習 |
異文化間教育・コミュニケーション教育 | |
言語教育と情報 | |
言語 | 言語の構造一般 |
日本語の構造 | |
言語研究 | |
コミュニケーション能力 |
日本語教師養成講座の選び方のポイント
日本語教師養成講座420時間以上のコースの内容は文化庁で定められたガイドラインに沿って構成されていますが、実際にはそれぞれの教育機関や養成講座ごとにカリキュラムは異なります。
ここからは日本語教師養成講座を決める際に、チェックすべき選び方のポイントをいくつか紹介します。
文化庁への届出が受理されている
日本語教師養成講座420時間コースを選ぶ際、最初に確認したいのが文化庁の届出受理済かどうか、という点です。
法務省告示校で日本語教師になるには、文化庁の届出受理済の日本語教師養成講座420時間コースを修了することが条件です。
この違いで修了後に日本語教師として働くときにも大きく影響が出てきますので、受講を検討している講座が文化庁への届出が受理されているかを必ず確認しておきましょう。
日程・スケジュール
日本語教師養成講座は420時間以上の講座を受講する必要があるので、修了までには少なくとも6ヵ月から1年の期間が必要です。
特に働きながら講座を受講する場合は、勤務時間以外のスケジュールで講座を選ぶ必要があります。
平日限定の講座、土日限定の講座、あるいは平日夜間と土日の組み合わせの講座、というように、受講スケジュールはスクールによりいろいろなコースがあります。
ご自身が通える受講スケジュールがあるかという点も、スクールを選ぶ際の重要なポイントです。
場所
先ほど述べたように日本語教師養成講座は少なくとも6ヵ月から1年の間、通学する必要があるので、スクールの場所も選ぶ際のポイントの1つになります。
通勤や生活圏内から離れた場所では、交通費や通学に要する時間もそれだけ多くなります。通勤圏内の主要駅であること、自宅からのアクセスが便利であること、というように、長期間の通学を想定して選ぶことも重要です。
費用(支払方法)
受講費用もスクールを選ぶ際の重要なポイントです。
日本語教師養成講座は420時間以上の講座の受講する必要があるので受講費用もそれなりにかかります。
できるだけ安く抑えたい、という気持ちもあると思いますが、価格だけで選ぶのはおススメできません。
なぜなら日本語教師養成講座で学ぶ内容は、日本語教師としての自分自身のその後のキャリアに大きく影響するからです。
自分が求める学習内容と価格が釣り合っているかどうか、その価格で自分に必要な学習内容は含まれているのか、というように複合的な視点で選ぶことが重要です。
費用を抑えるポイントとしては、スクールにより期間限定の割引制度やキャンペーンを行っていることがあるので、講座を選ぶ際、ホームページで割引情報などをチェックしておきましょう。
また、支払いに関しては、一括払いのほかに、クレジットカードの分割払いやローンが組める場合もあるので、申し込み前に支払方法は確認しておきましょう。
カリキュラムの内容
日本語教師養成講座を選ぶ上で最も重要なポイントは、講座のカリキュラムです。
そもそも日本語教師養成講座の教育内容は2000年に文化庁に設置された「日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議」においてまとめられた調査研究報告で基本項目が施されていますが、そのままの内容では現在の日本語教育の実態にそぐわない点も出てきています。
日本語教師養成講座を選ぶ際には、このような点も踏まえて、より実践的な内容がカリキュラムに含まれているかをチェックした方が良いでしょう。
日本語を学ぶ対象者、外国人を取り巻く日本の社会環境はこの20年で大きく変化しています。特に留学生以外の日本語教育が今の社会では求められるようになってきていますので、養成講座のカリキュラムが多様な学習者に対応できるものになっているのかというのは、これから日本語教師を目指す方にとってとても重要なポイントです。
日本語教育能力検定試験に合格する
日本語教師になるための2つめの条件は、日本語教育能力検定試験に合格することです。
日本語教育能力検定試験は、公益財団法人日本国際教育支援協会が実施している検定試験で、日本語教員となるために学習している方、日本語教育に携わっている方に必要とされる基礎的な知識・能力を検定することを目的とし、例年10月に実施されています。
受験には資格や制限がなく誰でも受験可能なため、毎年合格を目指して多くの方が受験をしています。
合格することができれば、法務省告示校で働くための条件を得られるほか、日本語教育に必要とされる幅広い知識があることの客観的な証明にもなるため、日本語教師の求人によっては日本語教師養成講座420時間以上のコースの修了とあわせて日本語教育能力検定試験の合格を条件にする日本語教育機関もあります。
このため、現役の日本語教師の方が、自身のスキルアップや日本語教育能力の証明のために検定試験に臨むことも多いです。
しかし、日本語教育能力検定試験の難易度は非常に高く簡単に合格できる試験ではありません。
独学で試験に臨むこともできますが、試験対策講座を受講する方法もあります。
試験合格に向けて効率的に勉強したい方には、試験対策講座の受講がおススメです。
日本語教育能力検定試験の内容は、別稿のコラムでも紹介しています。
参考:コラム「日本語教育能力検定試験についてわかりやすく解説」
コラム「日本語教育能力検定試験の難易度」
公益財団法人日本国際教育支援協会
大学・大学院で日本語教育を専攻する
日本語教師になるための3つめの条件は、大学や大学院で日本語教育を専攻することです。
メリットとしては、日本語教育関連科目を学ぶことができる大学や大学院で日本語教育を専攻することで、学位取得とあわせて日本語教師になるための条件が得られることです。
一方で、大学や大学院で日本語教育を専攻して日本語教師になるには、卒業まで4年間、大学院でも2年間通学する必要があります。費用面でも日本語教師養成講座以上の負担が発生します。
日本語教師にはどんな働き方がある?
日本語教師になるための条件を取得して日本語教師になった方は、どんなところで活躍をしているのでしょうか。
これから日本語教師を目指したい、と考えている方のために、日本語教師の働き方についていくつかご紹介したいと思います。
日本語学校で日本語教師になる
日本語教師が活躍している場所で、最も一般的なのは国内の日本語学校です。主に外国人留学生を対象に日本語を教える仕事です。
日本語学校で日本語教師として働く場合は、常勤講師と、非常勤講師の2つの勤務形態があります。
常勤講師の場合は、基本的には月給制で収入は安定しますが、その分拘束時間は長くなります。
非常勤講師の場合は、勤務先をスケジュールにあわせて掛け持ちしたり、空いた時間を自由に使ったりすることができますが、通常は授業の時間数や時給制で給与が支払われるため、常勤講師に比べて収入が不安定になることが多いようです。
日本語教師の応募条件などは、求人情報サイトを掲載している別稿のコラム「日本語教師の求人情報掲載サイトおすすめ7選」でご覧いただけます。
フリーランスの日本語教師になる
日本語教師は、特定の日本語学校に属さず、フリーランスとして働く方法もあります。
フリーランスの日本語教師は、例えばビジネスパーソンとの個人契約であったり、海外の学習者にオンライン授業を提供したりと、複数の仕事を掛け合わせるという働き方があります。
フリーランスでのメリットは、働く時間や働く場所が比較的自由に決められるという点です。
一方で、デメリットとしては収入が不安定なことがあげられます。
フリーランスの日本語教師については、別稿のコラム「フリーランスの日本語教師として働く」でも紹介しています。
海外で日本語教師として働く
日本語教師の活躍の場は、日本国内だけではありません。
世界中で日本語教育のニーズが高まる中、多くの国で日本語教師の需要が高まっています。
一方で、海外ではネイティブの日本語教師の割合が低く、日本語教師不足が問題になっています。
日本語教育に積極的な国に対して、国際交流基金や国際協力機構(JICA)といった国の機関が中心となり日本語教師や日本語教育をサポートする海外派遣事業を積極的に行っています。
海外の日本語教師の需要や、海外派遣プログラムについては、それぞれ別稿のコラムで紹介しています。
参考:コラム「日本語教師の海外の需要は?」
コラム「海外派遣プログラムで日本語教師を目指す」
ボランティアで日本語を教える
日本語教師にはボランティアとして活躍している方もたくさんいます。
在日外国人の増加とともに、日本に滞在する外国人の方々に対する日本語教育のニーズが高まっています。
彼らに対して自治体や任意団体、NPOなどが日本語教室を開講し支援を行っていますが、そのような場でも日本語教師のボランティアを募集しています。
ボランティアで日本語を教える場合でも、日本語を知らない人たちに対して正しい日本語の話し方や書き方、文法を理解してもらうというアプローチは変わりません。
専門知識や技術が必要なことから、ボランティアで日本語を教える場合でも日本語教師養成講座420時間以上のコース修了や、日本語教育能力検定試験合格といった、プロの日本語教師に求められる条件と同等のスキルがある方が望ましいとされています。
まとめ
日本語教師になるには、現時点で公的な資格はありませんが、実際には正しい日本語の話し方や書き方を教えるための専門知識が必要です。
とくに日本語学校の中でも法務省告示校で日本語教師になるには、4年制大学を卒業し、かつ文化庁届出受理済の420時間以上の日本語教師養成講座を修了する、大学または大学院で日本語教育を専攻し修了する、日本語教育能力検定試験に合格する、といった条件のいずれかまたは複数をクリアする必要があります。
日本語教師になるための条件を習得する方法は複数ありますが、すでに社会人で、大学に通うことはできない人が日本語教師を目指して勉強したい場合、現実的な方法としては実技をトータルに学べる日本語教師養成講座420時間以上のコースを受講する場合がほとんどです。
日本語教師養成講座を選ぶ際は、スクールによって特徴や違いがあるので、選び方のポイントを参考に自分に合った日本語教師養成講座を選びましょう。
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