海外派遣プログラムで日本語教師を目指す
2020年8月20日(木)
Category:コラム
日本語教師の需要は世界中に広がっています。
日本や母国の日系企業への就職といった経済的な理由や、マンガ・アニメ・J-POP・ファッションをはじめとする日本のサブカルチャー人気の高まりなどから、日本語を学習する人々が世界中で増加しています。
日本語学習のニーズが高まるに連れ、多くの国で日本語を教える日本語教師の需要も高まっています。
海外で日本語教師を目指す方法はいくつかありますが、その中で今回は、外務省が管轄する独立行政法人が行っている日本語教師の海外派遣プログラムをクローズアップしていきたいと思います。
目次
日本語教師の海外派遣プログラムとは?
海外派遣プログラムとは?
日本語教師の海外派遣プログラムとは、海外での日本語学習の普及、支援を目的に、各国の政府や教育機関と連携して小学校や中学校、高校や大学といった場所に日本語を母語とする教師を派遣して日本語教育を支援するプログラムです。
外国の日本語教育機関に日本語を母語とする教師や日本語教育の専門家を派遣することで、現地の日本語教育の改善や日本語教師のレベルアップを促すとともに、国と国、人と人との相互理解を深めることを目的としています。
海外派遣プログラムに参加するメリット
日本語教師の海外派遣プログラムに参加するメリットとしては、日本語教師としての経験を積むことができる点はもちろんですが、異文化社会で生活するためのメンタル力やコミュニケーション力など、人間力(人間として力強く生きていくための総合的な力)がアップすることもあげられるでしょう。
また、日本の政府機関を利用した海外派遣プログラムでは、現地での身分が保証される点や、生活にかかる費用負担が補助される(参加するプログラムによって内容は異なります)、という点も海外生活をする上では大きなメリットになります。
どんな海外派遣プログラムがある?
では、日本語教師の海外派遣プログラムにはどのようなものがあるのでしょうか。
政府機関の独立行政法人が行っている2つの海外派遣プログラムについて調べてみました。
国際協力機構(JICA)の派遣プログラム
独立行政法人国際協力機構(JICA=Japan International Cooperation Agency)は、日本の政府開発援助(ODA)を実施している政府機関です。
開発途上の国々に対して様々な形での支援や協力を行っています。
JICAのビジョン
ミッション
JICAは、開発協力大綱の下、人間の安全保障と質の高い成長を実現します。ビジョン
信頼で世界をつなぐ
JICAは、人々が明るい未来を信じ多様な可能性を追求できる、自由で平和かつ豊かな世界を希求し、パートナーと手を携えて、信頼で世界をつなぎます。アクション
使命感:誇りと情熱をもって、使命を達成します。
現 場:現場に飛び込み、人びとと共に働きます。
大局観:幅広い長期的な視野から戦略的に構想し行動します。
共 創:様々な知と資源を結集します。
革 新:革新的に考え、前例のないインパクトをもたらします。
国際協力の理念のもと、開発途上国が抱えている課題に対して、技術面と資金面の両面で協力、援助を行っています。
この支援事業の中で、JICA海外協力隊というボランティア派遣事業があり、日本語教師の海外派遣プログラムもその一つです。
この事業に参加すると、JICA海外協力隊「日本語教育」隊員として日本語教育にかかわる様々な活動を現地で行うことになります。
具体的には、
- ・日本語、日本文化・日本事情に関わる授業の実施
- ・現地人教師の日本語能力向上に向けた支援
- ・日本文化祭、スピーチコンテスト等のイベントの企画・実施
- ・教材やカリキュラムの作成・改訂
- ・現地人教師育成や研修会の実施
といった活動を行います。
主な配属先は中学校・高校、大学、専門学校、日系日本語学校とされています。
外部リンク:JICA海外協力隊 日本語教育
国際交流基金(JF)の派遣プログラム
独立行政法人国際交流基金(JF=The Japan Foundation)は、世界各国での総合的な国際文化交流事業を実施している政府機関です。
国際交流基金(JF)では、文化芸術交流、日本語教育、日本研究・知的交流の3つの交流事業を主軸に活動を行っていて、日本語教育事業の中に日本語教師海外派遣のプログラムがあります。
世界中でより多くの人に日本語を学ぶ機会を提供するために、現地の政府や教育機関等と連携して日本語教育の総合的な支援を行っているのです。
国際交流基金(JF)日本語教師の海外派遣事業プログラムには、参加する方の経験や専門知識に応じて参加できるプログラムが分かれています。
日本語教育のスペシャリストとして現地の日本語講座の運営・授業を行う「日本語上級専門家」から、専門的な知識がなくても参加できる「日本語パートナーズ」という派遣プログラムまで、幅広い職種があるのが国際交流基金(JF)の日本語教師海外派遣事業プログラムの特徴です。
- ・日本語上級専門家、日本語専門家
日本語上級専門家・日本語専門家は、日本語教育のスペシャリストとして海外の日本語教育環境の整備のため、カリキュラムや教材作成の助言、現地日本語教師の育成、教師間のネットワークづくりを促進する業務を行います。
- ・日本語指導助手
日本語指導助手は、日本語専門家等の指導の下で日本語教育支援事業を推進していく役割を担います。
- ・EPA日本語教師
EPA日本語教師とは、国際交流基金(JF)がインドネシアとフィリピンで実施するEPA日本語研修で、授業を担当する日本語講師です。
経済連携協定(EPA)に基づき来日を希望するインドネシア人とフィリピン人の看護師・介護福祉士候補者を対象に、現地で約6か月間日本語教育を行います。
外部リンク:経済産業省 経済連携協定(EPA)とは?
- ・米国若手日本語教員(J‐LEAP)
米国若手日本語教員(J‐LEAP)とは、日米間の文化・人材交流と米国日本語教育への支援強化を目的に、若手日本語教員をアメリカの日本語教育機関に派遣する事業です。
派遣先では、主に小・中学校や高校でアシスタントティーチャーとして活動するほか、地域の日本語教育や日本文化理解のための活動をサポートします。 - ・日本語パートナーズ
日本語パートナーズは、アジアの中学や高校の日本語教師や生徒のパートナーとして、授業のアシスタントや、日本文化の紹介を行う業務です。日本語教育の専門的知識を持っていない方でも応募できます。
海外派遣プログラムには資格が必要?
では、実際に日本語教師の海外派遣プログラムに参加するためには、どのような資格やスキルが必要になるのでしょうか。
日本語教師海外派遣プログラムの応募に必要な資格は?
JICA海外協力隊「日本語教育」隊員には何が必要?
JICA海外協力隊の「日本語教育」隊員では参加を希望する方に対して次のような資格やスキルを求めています。
- ・日本語教育に関する知識及び技能
(日本語教師養成講座修了、日本語教育能力検定試験合格、大学の主専攻、副専攻修了等) - ・日本語を客観的に分析できる能力、学習者の母語(現地語)の習得に意欲的な姿勢
- ・教科書・教材不足であっても授業を組み立てられる柔軟性
- ・同僚教師と協働して、現地の状況に応じたコース運営やイベントの企画・実施ができる力
- ・日本文化(着付けや茶道、書道など)に関する知識や経験(部活やサークル等の経験も可)
- 具体的な資格条件は募集案件ごとに異なります。
詳細はJICA海外協力隊募集情報に掲載されています。
※2020年春募集(長期派遣)、2020年度第1回募集(短期派遣)の募集は終了しています。
国際交流基金(JF)日本語教師の海外派遣事業プログラムで必要な資格や条件は?
国際交流基金(JF)日本語教師の海外派遣事業プログラムでは募集する職種によって必要な資格や条件が異なります。
国際交流基金(JF)日本語教師海外派遣プログラム 職種別募集条件
応募先の種類 | 日本語 パートナーズ | 米国若手 日本語教員 (J‐LEAP) | EPA 日本語講師 | 日本語 指導助手 | 日本語 専門家 | 日本語 上級専門家 |
年齢 | 20-69歳 | 35歳未満 | 65歳未満 | ― | ― | ― |
学歴 | 派遣国・地域により異なる | 大卒以上 | 日本語教育関連分野で 修士号以上 | |||
日本語教育 学習歴 | 不問 | 下記のいずれか ・大学で日本語教育を専攻・修了 ・日本語教育能力検定試験に合格 ・日本語教師養成講座420単位修了 | 日本語教育関連分野で 修士号以上 | |||
日本語教授経験 | 不問 | 経験ありが望ましい | 2年以上 | 10年以上 | ||
派遣期間 | 1年未満 | 通常2年 | 約7か月 | 通常2年 | 通常2年 | 通常2年 |
派遣国・地域 | 東南アジア及び台湾 | 米国 | インドネシア/フィリピン | 海外 | 海外 | 海外 |
具体的な資格条件はそれぞれの募集ページに掲載されています。
まとめ
日本語学習のニーズが世界中で高まるなかで、国際協力と支援を目的に、政府機関が世界各国に日本語教師の海外派遣を行っています。
日本語教師の海外派遣事業は、プログラムによって派遣される国や期間が異なり、また、職種によって求められる資格やスキルも異なります。
いずれのプログラムでも異文化に適応する力やコミュニケーション力が必要になります。
それぞれ違いはありますが、海外で現地の人たちと生活をともにしながら日本語教師として日本語を教えること、日本語教育に携わることは、日本国内では決して得られない貴重な経験です。
興味のある方は、自身の日本語教師のキャリア形成の一つとして、海外派遣事業プログラムの参加を検討してみてください。
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