日本語教師とは

2020年12月17日(木)
Category:コラム
みなさんは日本語教師という仕事をご存じですか。
日本人である私たちは日ごろ日本語を当たり前のように使っていますが、日本語を話したことのない人たちにとって、日本語はとても難しい言語です。
日本語教師は、日本語を母語としない人たちに日本語を教える仕事です。
では、日本語教師とは、どのようなところで活躍をしているのでしょうか。
今回は日本語教師の仕事の内容や適性、活躍している場所など、日本語教師のさまざまなことについて焦点を当てていきたいと思います。
日本語教師はどんな仕事?
はじめに、日本語教師の仕事の内容について紹介していきます。
日本語教師は日本語を教える専門家
日本語教師は、日本語を母語としない外国人の人たちに日本語を教える職業のことをいいます。日本語のわかる人に教える国語とはことなり、外国語として日本語を教える日本語の専門家です。
さまざまな国の人に、日本語の読み書き、文法、発音のしかたなどを教えるのが日本語教師の仕事ですが、学習者に日本語を身近に感じてもらうために、日本の文化や生活について教えることもあります。
日本語教師の人数はどれくらい?
文化庁の調査資料によると、日本語教師の人数は令和元年度の調査で46,411人(常勤、非常勤、ボランティアを含む)となっていて、前年度より11.5%増加、平成2年度の人数と比較すると5.6倍増加しています。
一方で、日本語学習者の人数も増加しています。同じく文化庁の令和元年度の調査では277,857人となっていて、前年度より7.0%増加、平成2年度の人数との比較では4.6倍となっています。
日本語学習者数の推移
出典:文化庁国語科 令和元年度 日本語教育の概要 パンフレット版
日本語教育実施機関・施設等数 ,日本語教師等の数 ,日本語学習者数の推移
2020年は、新型コロナウィルス感染拡大の影響により外国人の入国制限措置が取られていたため、日本語学習者の人数は一時的に減少する可能性はありますが、2020年10月から入国制限が緩和されていて、同年10月から外国人留学生も日本への入国が可能になりましたので、日本語学習者の人数もこのまま収束すれば回復が見込まれます。
日本語教師が日本語を教える相手は?
日本にはさまざまな国から多くの外国人が日本語を学びに来ています。
国別の日本語学習者の人数の割合を見ると、中国がもっとも多く令和元年度は91,547人で全体の32.9%を占めています。
2番目に多いのがベトナムで62,117人、それに続いて3番目に多いのがネパールで14,246人です。
日本語学習者数(国・地域別)
出典:文化庁 国語科 令和元年度 日本語教育の概要 Ⅰ-6 内訳図表 日本語学習者数
(国・地域別)(上位20か国・地域)
日本語教師の活躍する場所は?
日本語教師の数は日本語学習者の数とともに増加傾向にあることがわかりました。
では、実際に日本語教師はどのような場所で活躍しているのでしょうか。
続いて、日本語教師の活躍する場所や働いている場所について取り上げていきたいと思います。
法務省告示校(日本語学校)
日本語を母語としない外国人の人たちに日本語を教える教育機関として、最も多いのが法務省告示校(日本語学校)です。
法務省告示校とは、日本語を勉強する目的で留学での在留資格を取得した外国人留学生を受け入れることが可能な日本語学校で、法務省が定めた授業時間や教員数などの基準を満たした場合に設置が認められる学校です。
法務省告示校で日本語教師になるには、法務省が定めた基準を満たす必要があります。
大学・大学院
大学や大学院では、自校の留学生の日本語能力を高めるために、日本語学習の授業を設けています。
大学や大学院で日本語教師となる場合は、留学生に対する日本語教育とあわせて、日本語教育の研究に関する仕事にも携わることがあります。
外国人を採用している企業
外国人を採用している企業が、自社の社員に対する日本語教育を目的に、日本語教師を採用しているケースもあります。
日本語学習者のレベルや人数は企業によってさまざまです。
大人数での研修やグループレッスン、個人レッスンのニーズもあります。
学習内容については、ビジネス会話に必要な日本語や、専門的な言葉を交えた高度な内容を求められることもあるようです。
外国人介護人材のいる福祉施設
日本の介護人材不足解消の対策として、外国人介護士の受け入れが進んでいることから、外国人介護人材がいる介護施設で日本語教師を採用しているところもあります。
とくに介護現場における日本語教育は、一般的な日本語に加え、介護の専門用語、要介護者とのコミュニケーションに必要な表現などを習得させることが求められます。
技能実習生の研修センター
技能実習生は、入国前に一定の日本語を学習してから来日しますが、介護分野の場合、介護の日本語も習得する必要があるため、外国人技能実習生受入事業の認可を得た、事業協同組合が主宰する講習会・勉強会などで日本語の勉強を継続しながら技能実習を行っています。
そのため、技能実習生に日本語を教える日本語教師のニーズが年々高まってきており、介護現場で介護に特化した日本語を教える日本語教師の求人も目立ってきました。
インターナショナルスクール
日本で働く外国人の子どもたちが通うインターナショナルスクールでも、日本語を教える日本語教師が働いています。
インターナショナルスクールでは、幼稚園児から小学生を中心とした低年齢層に日本語を教えるため、日本語教育能力とあわせて、幼児教育や児童教育の知識や、会話するために必要な児童・生徒の母語を話す語学力も求められます。
地域の日本語ボランティア教室
地域に住んでいる外国人の日本語学習のサポートを目的に、国際交流協会や自治体の地域振興部門、またはNPOなどの民間の団体が運営している国際交流団体などで、ボランティアによる日本語教室を開催しているところがあります。
このようなところでボランティアの日本語教師は欠かせない存在です。
ボランティアの日本語教師については、別のコラムで紹介しています。
コラム ボランティアで日本語を教える
海外で日本語教師として働く
日本語教師の活躍の場は、日本国内だけではありません。
世界中で日本語教育のニーズが高まる中、多くの国で日本語教師の需要が高まっています。
日本語教育に積極的な国に対して、国際交流基金や国際協力機構(JICA)といった公的機関が中心となり日本語教師や日本語教育をサポートする海外派遣事業を積極的に行っています。
海外の日本語教師の需要や、海外派遣プログラムについては、それぞれ別のコラムで紹介しています。
コラム 日本語教師の海外の需要は?
海外派遣プログラムで日本語教師を目指す
日本語教師になるには?

先ほど紹介した通り、日本語教師が活躍する場所はたくさんあり、日本に在留する外国人の増加とともに活躍の場はこれからも増えていくことが考えられます。
では、実際に日本語教師になるには、どのようなところで学習し、資格を取得すればよいのでしょうか。
今度は日本語教師になるための条件や資格について紹介していきたいと思います。
日本語教師になるために必要な資格は?
現時点で日本語教師になるための公的な資格はありません。
ですが、先ほど紹介した法務省告示校(日本語を学ぶ目的で、在留資格「留学」を取得した外国人を受け入れることが可能な日本語教育機関)で日本語教師として働くためには、次の条件のいずれかまたは複数を備えている必要があります。
- ・4年制大学を卒業し、かつ文化庁への届出が受理された420時間以上の日本語教師養成講座を修了していること
- ・大学または大学院で日本語教育を専攻し修了していること
- ・日本語教育能力検定試験に合格していること
法務省告示校の日本語学校以外でも、日本語教師を募集している学校や、企業、機関はありますが、そのほとんどがこの3つのいずれかまたは複数を応募資格の条件にしています。
日本語教師になるための3つの条件について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
日本語教師養成講座420時間以上のコースを修了する
日本語教師になるための1つめの条件は、文化庁届出受理済の日本語教師養成講座420時間以上のコースを修了することです。
とくに、法務省告示校で日本語教師になるには、4年制大学を卒業したうえで、文化庁届出受理済の日本語教師養成講座420時間以上のコースを修了することが条件の1つとされています。
日本語教師になることを目指す人の多くが、知識と実技を総合的に学ぶことができる日本語教師養成講座420時間以上のコースで、学ぶことを選択しています。
日本語教師養成講座については、別のコラムで紹介しています。
日本語教育能力検定試験に合格する
日本語教師になるための2つめの条件は、日本語教育能力検定試験に合格することです。
日本語教育能力検定試験は、公益財団法人日本国際教育支援協会が実施している検定試験で、日本語教員となるために学習している人、日本語教育に携わっている人に必要とされる基礎的な知識・能力を検定することを目的とし、例年10月に実施されています。
受験には資格や制限がなく誰でも受験可能なため、毎年合格を目指して多くの人が受験をしています。
日本語教育能力検定試験は例年合格率が25%前後となっていて、簡単に合格できる試験ではありません。
独学で試験に臨むこともできますが、試験対策講座を受講する方法もあります。
日本語教育能力検定試験の内容は、別のコラムでも紹介しています。
コラム 日本語教育能力検定試験についてわかりやすく解説
日本語教育能力検定試験の難易度
大学・大学院で日本語教育を専攻する
日本語教師になるための3つめの条件は、大学や大学院で日本語教育を専攻することです。
日本語教育関連科目を学ぶことができる大学や大学院で日本語教育を専攻することで、学位取得とあわせて日本語教師になるための条件が得られます。
一方で、大学や大学院で日本語教育を専攻して日本語教師になるには、卒業まで4年間、大学院でも2年間通学する必要があります。費用面でも日本語教師養成講座以上の負担が発生します。
日本語教師の国家資格化の動き
日本語教師には専門的な知識が求められますが、小、中、高等学校で教育職員に就くために必要な教員免許(教育職員免許状)のような公的な資格はありません。
ですので、これまで紹介した内容は、働く場所によって必要な条件が異なります。
一方で、日本語教師の資格を国家資格にするための議論が進められています。
現時点で日本語教師の国家資格化は不透明な状況ですが、いずれにしても今後は日本語教師になるための要件が厳しくなることが予想されますので、とくに日本語教師養成講座の受講を検討しているかたは早めの行動をとることをオススメします。
日本語教師の国家資格化の動きについては、別のコラムでも紹介しています。
コラム 日本語教師は国家資格化になる?
日本語教師に必要な知識とスキルは?
プロの日本語教師として日本語を教えるためには、専門的な知識やスキルが必要になります。
日本語教育の主軸となる要素としては、次の3つの知識・能力が基本となります。
- ・言語に関する知識・能力
- ・日本語の教授に関する知識・能力
- ・日本語教育の背景をなす事項についての知識・能力
とくに、日本語教師養成講座420時間以上のコースの学習内容では、「社会・文化・地域」「言語と社会」「言語と心理」「言語と教育」「言語」の5分野が軸となっています。
社会・文化・地域 | 世界と日本 |
異文化接触 | |
日本語教育の歴史と現状 | |
言語と社会 | 言語と社会の関係 |
言語使用と社会 | |
異文化コミュニケーションと社会 | |
言語と心理 | 言語理解の過程 |
言語習得・発達 | |
異文化理解と心理 | |
言語と教育 | 言語教育法・実習 |
異文化間教育・コミュニケーション教育 | |
言語教育と情報 | |
言語 | 言語の構造一般 |
日本語の構造 | |
言語研究 | |
コミュニケーション能力 |
この内容は、文化庁に2000年に設置された「日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議」のなかでまとめられた調査研究報告「日本語教員養成について」が基準になっています。
日本語教師になるために必要な資格については、別のコラムでも紹介しています。
コラム 日本語教師になるには
日本語教師の仕事に就くには?
日本語教師として働くためには仕事先を探す必要がありますが、一般の就職情報サイトのほかにも、日本語教師の求人に特化した情報が掲載されているサイトもあります。
たとえば、日本語教育の発展に取り組んでいる公益社団法人 日本語教育学会や一般財団法人 日本語教育振興協会では、学会や協会関連の機関が募集している日本語教師の求人情報を掲載しています。
また、民間の企業や日本語教育関連の専門書店のサイトでも、日本語教師の求人情報を掲載しています。
日本語教師の求人情報を掲載している主なサイト
日本語教師の求人については、別のコラムでも紹介しています。
まとめ
日本語教師は、日本語を母語としない外国人の人たちに日本語を教える日本語の専門家です。
日本に在留する外国人の増加とともに日本語教師の数も増加傾向にあり、少子高齢化の対策として外国人の労働力が期待される中で、今後も日本語教師のニーズは高まっていくことが予想されます。
また、日本語教師の活躍する場所は、日本語学校や大学、大学院といった教育機関にとどまらず、企業内の講師や、外国人介護人材のいる施設や技能実習生の研修センターなど、さまざまなところで広がりを見せています。
プロの日本語教師として日本語を教えるためには、専門的な知識やスキルが必要になりますが、外国人学習者の成長を実感しながら自らも成長できる大変やりがいのある仕事です。
日本文化や異文化に興味のある人、日本語教育を通じて外国のかたと交流したい人は、日本語教師になることを目指してみてはいかがでしょうか。
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