ボランティアで日本語を教える

2020年10月22日(木)
Category:コラム
日本に在留する外国人数が年々増え続けている中でボランティアの日本語教師が活躍しています。
そこで今回は、日本に暮らす外国人の方たちのサポート役として、ボランティアで日本語を教える方法についてご紹介します。
ボランティアの日本語教師とは?
そもそもボランティアとは、自分の意志で公共性の高い活動をする人やその行動のことを言います。
日本語を母語としない外国人の方たちに、日本語をほぼ無償で教える活動を行っているのがボランティアの日本語教師です。
では、日本ではどれくらいの人がボランティアとして日本語を教えているのでしょうか。
日本語教師全体の半数がボランティア
毎年、文化庁が国内の日本語教育の概要について調査を行っています。最新の令和元年度の調査では、日本語教師の人数46,411人のうち、53.3%にあたる24,745人がボランティアで日本語を教えています。
出典:文化庁国語科 令和元年度 国内の日本語教育の概要 3-(3)職務別の状況
ボランティアで日本語を教える理由
日本語教師の方がボランティアで日本語を教える理由はさまざまです。その中でも、
- ・日本語教育を通じて地域貢献、社会貢献がしたい
- ・地域に住んでいる外国人の方をサポートしたい
- ・定年退職後の時間をボランティア活動で有効に使いたい
- ・日本語教育を通じて外国の方と日本語で交流したい
このような思いをもってボランティアの活動をしている方が少なくないようです。
ボランティアの日本語教師の需要は?
ボランティアとしての日本語教師の需要はどれくらいあるのでしょうか。
実際にどのような機関がボランティアの日本語教師を募集しているかを調べてみました。
ボランティアを募集している機関
ボランティアの日本語教師を募集している機関としては、都道府県や市区町村といった自治体のなかの地域振興部門や、自治体の国際交流の専門機関として設置されている国際交流協会などの外郭団体があります。
例えば東京都では、22の区や市に国際交流協会が設置されていて、そのうち20の国際交流協会で日本語教室が開催されています。
自治体専門機関の国際交流協会に限らず、NPOなどの民間の団体が運営している国際交流団体もあります。
活動内容は団体によって異なりますが、日本語教室を開催して日本語学習のサポートを行っている団体もあります。
募集情報の探し方
自治体や国際交流協会などの団体がボランティアの日本語教師を募集する場合は、各自治体の広報誌や、地元新聞の情報欄、地元公共機関の掲示板などで告知されています。
また、それぞれの国際交流団体のホームページでも日本語教師の募集情報が掲載されていることがあります。
このほか、登録制で随時ボランティアを受け付けている団体もあります。
日本語教師のボランティアに関する情報を掲載しているサイトもありますので、興味のある方は参考にしてください。
参考:日本語教師のボランティアに関する主な情報サイト
- 東京日本語ボランティアネットワーク
- U-biq(ゆービック)
- 東京都国際交流委員会
- 埼玉県国際交流協会
- かながわ国際交流財団
- 横浜市日本語交流協会
- 千葉県国際交流センター
- 千葉市日本語交流協会
- 東海日本語ネットワーク
- とよた日本語学習支援システム
- 北海道日本語教育ネットワーク
ボランティアで日本語を教えるために必要なことは?
自治体や団体によりボランティアの日本語教師として活動するための要件が異なります。
日本語教師の資格や経験を問わない組織もある一方で、ボランティアであっても日本語を教えるためには正しい知識と資質・能力が必要とされることも増えてきています。
では、ボランティアで日本語を教えるための知識は、どのように身に付ければよいのでしょうか。
日本語教育の知識の身に付け方
ボランティアで日本語を教えるための専門知識を身に付けるには、主に次のような方法があります。
日本語教室を主宰するボランティア団体の日本語教授法講座を受講する
日本語教室を主宰しているボランティア団体によっては、日本語の教え方を指導する講座を開催しているところがあります。
日本語を教えた経験のない方にとっては、身近で始めやすい方法です。
日本語教師養成講座を受講する
日本語教育の知識を身に付ける方法としては、日本語教師養成講座を受講する方法もあります。
知識と実技をあわせて学べる日本語教師養成講座を受講して日本語教育の専門知識を身につければ、ボランティアだけでなくプロの教師として働くこともできます。
参考:コラム 日本語教師になるには
日本語教師に求められる資質・能力
ボランティアで日本語教育を教えるためには、正しい知識と合わせて日本語を教えるための資質・能力も必要です。
文化庁では、日本語教育人材に共通して求められる基本的な資質・能力として次の3つの要素をあげています。
- ・日本語を正確に理解し的確に運用できる能力を持っていること。
- ・多様な言語・文化・社会的背景を持つ学習者と接する上で、文化的多様性を理解し尊重する態度を持っていること。
- ・コミュニケーションを通じてコミュニケーションを学ぶという日本語教育の特性を理解していること。
参考:文化庁「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」
ボランティアで日本語を教える場合でも同様のことが言えます。
特に重要なのは学習者のニーズをきちんと把握して指導を行うことです。
ボランティアの日本語教室には、さまざまな国の人が日本語を学びに来ます。
日本語を学ぶ理由や目的は人それぞれです。
日本人と話しがしたくて日本語教室に来ている人もいれば、子どもが学校からもらってくるプリントが読めなくて困っている、という人もいます。
どのレベルに合わせて教えるのかではなく、一人ひとりのニーズに合った指導を心がけることが大切です。
ボランティアに対する理解
ボランティアで日本語を教えるためには、日本語を教えるための知識やスキルのほかにも、ボランティアという立場を理解して、相手に正しく接するための心構えをもつことが必要です。
異文化に対しての理解と多様性をもつ
自分の価値観を押し付けたり、相手の考えや文化を否定したりするようなことはあってはなりません。
どの国の文化に対しても敬意を持って接することが求められます。
学習者に公平に指導する
日本語教室にはさまざまな国の人が日本語を学びに来ます。
日本語能力のレベルも人により違います。
「話しやすいから」「授業が進めやすいから」などという理由で日本語ができる人ばかりと対話をすれば、自分は差別を受けているのでは、という誤解を与えてしまうことにもなりかねません。
日本語のレベルのほかにも、国籍や年齢、性別などで差別せず、分け隔てなく接することも必要な要素です。
「教える側が上である」とは考えない
教師という立場で「教えてあげている」というような態度をとる人はボランティアには向いていません。対等な立場の人間として、異国で暮らしている人たちを支援するサポート役としての役割を理解する必要があります。
相手のニーズをきちんと把握する
相手のニーズをきちんと把握することも重要です。教える側の都合や考えを優先して相手をないがしろにするのは本末転倒といえます。
一人ひとりにあわせる指導をこころがけることが大切です。
社会人としての基本やマナーを守る
時間を守る、約束を守るといった社会人としての基本的なマナーを守ることはもちろんですが、自分は「プロではないから」「報酬はもらっていないから」という考えではなく、所属する団体の一員として、常識的な行動が求められます。
ボランティアの日本語教室は、主に異文化交流を目的とした国際交流団体が主宰しています。
ですから、ボランティアで日本語を教えるためには、国際交流団体の目的である相互理解と異文化交流という趣旨を理解することが大切です。
日本語教師であるとともにボランティア団体の一員であるという自覚を持つことが求められます。
まとめ
日本に在留する外国人の増加とともに、ボランティア教室での日本語教育のニーズが高まっています。
多くの自治体や国際交流団体が、在留する外国人の支援を目的とした日本語教室を開催していて、ボランティアの日本語教師が活躍しています。
ボランティアと言えども、日本語を教えるための一定の知識が必要であり、併せて、ボランティアという立場を理解して、そこに集まる人々に正しく接するための心構えをもつことが必要です。
ボランティアの日本語教師の活動に興味のある方は、地域の国際交流団体がどのような活動を行っているか調べてみることをおススメします。
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