外国人が発音しづらい日本語とは?記号や種類も紹介!

2021年2月4日(木)
Category:コラム
日本語を学習するうえで文法と同じくらいに重要なことは、正しい発音を身につけることです。
発音が正しくないと、言葉の意味や相手に伝わる印象が変わってしまうことがあります。
一方で、日本語を母語としない日本語学習者の中には、日本語の発音はむずかしい、よくわからないと感じている人も少なくありません。
では、日本語を母語としない外国人の日本語学習者にとって、発音がしにくい日本語とはどのような言葉なのでしょうか。
今回は、外国人が発音しづらい日本語について調べてみたいと思います。
外国人が発音しづらい日本語
母語にない発音は、外国人にとって発音しづらいものがあります。
そのため、日本語学習者の母語の違いによって、発音しづらい日本語も異なります。
母語によって発音しづらい日本語が違う
日本語学習者にとって、母語にない発音は、日本語でも発音しづらいとされていますが、具体的にどのような日本語が発音しづらいのでしょうか。
言語のちがいによる発音しづらい日本語について詳しく見ていきたいと思います。
英語圏の人が発音しづらい日本語
英語圏の人が発音しづらい日本語としては、「会社(かいしゃ)」や「入る(はいる)」など、「ア」と「イ」のような母音が続く発音があります。
日本語の場合、2つの母音が並んでも別々に発音する言葉が多くありますが、英語の発音は母音が2つ並んだ場合、二重母音といって滑らかで連続して発音する習慣があるためです。
他にも、「学校(がっこう)」や「結婚(けっこん)」など、小さい「っ」が入ると発音がしづらい傾向にあります。
日本語の小さい「っ」は、「促音(そくおん)」という、つまった発音です。
英語では、「hot(hɑ’t | hɔ’t)」のように前の母音を強く発音して、あとの文字を発音しません。
英語の発音では「促音(そくおん)」を使わないことから、日本語では普通に使っている小さい「っ」が入る 言葉を発音することが難しいようです。
フランス語を母語とする人が発音しづらい日本語
フランス語を母語とする人は、「は行」が苦手な傾向にあります。
フランス語では「hotel (otɛl | ɔtɛl)」のように「h」の発音をしないため、hの発音で構成された「は行」の日本語は、意識して発音をしなければなりません。
また、フランス語以外でもイタリア語やスペイン語も「h」の発音をしない言語であるため、イタリア語やスペイン語を母語とする人も、同様に「は行」の発音が難しいと感じるようです。
中国語を母語とする人が発音しづらい日本語
中国語を母語とする人が発音しづらいと感じている日本語に、「か」「が」というような清音と濁音を違う意味として発音する言葉があります。
中国語の発音の場合、「ka」を「ga」と発音しても意味上の違いはなく、どちらで発音してもよいことになっているため、日本語の清音と濁音の違いを理解することが難しいとされています。
このため、たとえば「ありがとう」は「ありかとう」と発音してしまうことや、「かっこう」と「がっこう」の違いを聞き取れない、といった傾向があります。
韓国語を母語とする人が発音しづらい日本語
中国語の場合と同様に、韓国語でも無声音(声帯を使わず口や舌で声を出す音)と有声音(喉から声を出す音)の区別が無いため、韓国語を母語とする人は清音と濁音を違う意味として発音する言葉、たとえば「かっこう」と「がっこう」といった違いの発音がしづらく、聞き取れない傾向にあるようです。
韓国語で使う濁音は限定されていて、「ㄱ(k)」「ㄷ(t)」「ㅂ(p)」「ㅈ(tʃ)」という特定の4つの子音が、母音のすぐ後にくる場合や、語中にある場合に「ㄱ(g)」「ㄷ(d)」「ㅂ(b)」「ㅈ(dʒ)」という発音に変わります。
ほかにも、「じ行」以外の「ざ行」の音が母語にないことから、「ザ・ジ・ズ・ゼ・ゾ」を発音する場合に、最も近い「じ行」の発音として「ジャ・ジィ・ジュ・ジェ・ジョ」となるようです。
日本語の発音記号
外国人にも日本語の発音が理解できるように、アルファベットのように表記する世界共通の「発音記号」が存在しています。
それらは「国際音声記号(IPA)」と呼ばれる発音記号のことです。
国際音声記号(IPA)とは?
国際音声記号は英語で表記すると「International Phonetic Alphabet」と言い、頭文字をとって「IPA」と呼ばれています。
どんな言語でも、発音できるようになる記号として、国際的に定められているものです。
国際音声記号(IPA)を理解しておけば、理論的には誰でも正しく日本語の発音ができるとされています。
子音の発音記号
国際音声記号(IPA)で定められている「子音」の音声記号について、少し紹介していきます。
- ・/p/:ぱぴぷぺぽの子音
- ・/b/:ばびぶべぼの子音
- ・/t/:「たてと」や「ティ、トゥ」の子音
- ・/d/:「だでど」や「ディ、ドゥ」の子音
- ・/k/:かきくけこの子音
- ・/g/:がぎぐげごの子音
- ・/ tɕi /:「ち」の子音
- ・/ t͡s /:「つ」の子音
母音の発音記号
国際音声記号(IPA)で定められている「母音」の音声記号について、少し紹介していきます。
- ・/i/:「い」の母音
- ・/e/:「え」の母音
- ・/a/:「あ」の母音
- ・/o/:「お」の母音
- ・/ɯ/:「う」の母音
(「u」は唇の丸めを伴うが、日本語の「う」は丸めを伴わないので、違う記号の「ɯ」を使う)
日本語の「ん」の発音の種類
日本語の「ん」は文字で書くと同じですが、実は後続の音によって発音の仕方が異なります。日本人は当たり前のように使っていますが、外国人にとっては、理解しないと発音しづらい言葉のひとつです。
「ん」の後に子音が来ると発音が変わる
通常に発音する場合は、そのまま「ん」と発音して問題ないのですが、「ん」の後に子音が来ることで、発音が変化するのです。どのように発音が変化するのでしょうか。
後ろに子音がない時の「ん」
「ん」の後ろに子音がない場合は、鼻から声を出す「N」の発音になります。
たとえば、「本(ほん)」・「パン」・「かん」といった発音が該当するでしょう。
「ん」の後ろに「ぱ行」・「ば行」・「ま行」が続く場合
「ん」の後ろに、「ぱ行」・「ば行」・「ま行」が来る時には、「ん」の発音は「m」の発音になります。
「m」の発音は、唇を閉じて鼻に息を通して出す音(鼻音)のことです。
たとえば、「乾杯(かんぱい)」・「昆布(こんぶ)」・「群馬(ぐんま)」などといった言葉になります。
この「ぱ行」・「ば行」・「ま行」は、すべて唇で作る音であることから、発音に引きずられて、「ん」の発音も唇を閉じて鼻に息を通して出す音になるのです。
「ん」の後ろに「た行」・「だ行」・「な行」・「ら行」が続く場合
「ん」の後ろに、「た行」・「だ行」・「な行」・「ら行」が続く場合は、「ん」の発音が「n」の発音になります。
「n」は、舌を上の前歯の根本あたりに押し当てて、唇を閉じて鼻に息を通して出す音です。
専門的には、「歯茎音」と呼ばれています。
たとえば、「コンタクト(こんたくと)」・「感動(かんどう)」・「神無月(かんなづき)」・「還暦(かんれき)」などです。
「ん」の後ろに「に」が続く場合
「ん」の後ろに「に」が続く場合は「ɲ」の発音になります。「ɲ」は「に」の子音で、「n」の発音よりも、後ろの方に舌を持っていき、唇を閉じて鼻に息を通して出す音です。
たとえば、「カンニング(かんにんぐ)」・「筋肉(きんにく)」・「コンニャク(こんにゃく)」が該当します。
「ん」の後ろに「か行」・「が行」が続く場合
「ん」の後ろに「か行」・「が行」が続く場合は、「ん」の発音は「ŋ」になります。
「ŋ」の発音は、舌の根本あたりを上顎の後ろの方につけ、唇を閉じて鼻に息を通して出す音です。
たとえば、「感覚(かんかく)」・「ガンガン(がんがん)」・「信号(しんごう)」などが該当します。
日本語の母音の発音の仕組みを知っておこう
外国人が日本語を発音しづらい場合、綺麗に発音するためには、どういった工夫や練習が必要になるのでしょうか。
母音の基本的な口の形を意識
日本語を綺麗に発音するためには、発音の仕組みを知ることが大切です。
そのためにも、母音の基本的な口のかたちや舌の位置(上下、前後)を意識して、発音する必要があります。
アイウエオの発音をするときの口の状態
日本語の母音は、「ア・イ・ウ・エ・オ」です。この母音を発音する時に、口の形の作り方を意識すれば、聞き取りやすい綺麗な発音になります。
- ・アの口の形
自然な口の構えであごを大きく開きます。大きさとしては、上下の唇の間に、指2本が入る程度が理想です。
- ・イの口の形
ほとんど口を開かない状態にします。舌は上歯茎の硬口蓋に向けて、ジーと摩擦音が起こる手前まで高く上げます。
- ・ウの口の形
ウの発音も、口をあまり開かずに発音します。また、唇をまるめないで発音します。
舌先の位置は奥に引っ込め、舌の付け根に近い部分を緊張させて盛り上げる感じで発音します。
- ・エの口の形
アの口構えからあごの開きを閉じ、舌の位置をアの時よりも前に持ち上げる印象です。
唇は両端を左右に引く感じになります。
- ・オの口の形
ウの口構えよりあごを開き、上下の唇の間に人差し指が縦に入るくらいの大きさに開けます。
舌はウの時よりも、奥に引き込む気持ちで、アの時よりも奥舌が後ろへ持ち上げられる感じです。
母音の練習の仕方
正しく日本語を発音するためには、母音の発音を意識することが大切です。
母音の発音は、口の形と舌の位置を正確に意識することで、きれいに発音することができます。
練習の仕方のひとつとして、鏡の前で口の形を意識して確認する方法があります。
各母音から、アエ、イエ、ウア、オアといった次の母音に移り変わるような発音を繰り返すことで、正しい母音を発音する練習になります。
ですが、練習以上に大切なことがあります。
それは、学習者の人に対して目標の発音をはっきりさせることです。
学習者の人は何をどう直せばよくなるのかが分かりません。
目標が分からなければ、発音を練習する意欲も失せてしまいます。
日本語学習者の人に対して発音の練習を指導するときには、今の発音は何がどのように良くなくて、どこをどう直せばいいのか、といった具体的なことが分かるように目標の発音のイメージを持ってもらうことが大切になります。
まとめ
外国人が発音しづらい日本語は、母語によって苦手な発音が異なるので、母語の特徴を理解した上で、発音指導をすることが大切です。
より綺麗な発音を実現するためにも、国際音声記号や「ん」の発音の種類、きれいな母音の発音方法を理解し、目標の発音をイメージさせながら練習を促すことが重要になります。
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