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アフターコロナでどうなる?日本語教育業界と日本語教師

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アフターコロナ

2020年7月8日(水)

Category:コラム

新型コロナウイルス感染拡大の影響で日本語教育業界は大きな影響を受けています。
教育現場で日本語を教える日本語教師は今後どうなるのでしょうか。

また、これから日本語教師を目指す方は、どのような準備と行動が必要になってくるのでしょうか。

現在の日本語教育業界と今後の見通しを含めて、アフターコロナのポイントをお伝えします。

コロナショックの影響 今の状況は?

新型コロナウイルス感染拡大にともなう緊急事態宣言が解除され、世の中の動きは少しずつ通常に戻りつつあります。一方で日本語教育業界は厳しい状況が続いています。

外国人留学生の状況は?

新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するため日本国内で緊急事態宣言が発令されるとともに、外国人に対する入国規制がかかりました。現在も入国規制は多くの国を対象に継続されています。

これにより今年の春から日本語を学ぶために来日を予定していた外国人留学生は、日本に入国することができず、母国で足止めされている状況が続いています。

新規の感染者が減少し、緊急事態宣言が解除されたことで徐々に規制解除の動きが出てきていますが、本格的な入国規制の解除は7月以降になる見通しです。

また、すでに日本に滞在している外国人留学生も、厳しい状況に置かれています。

緊急事態宣言中は日本語学校で授業ができない状態が続きました。

加えて、外出自粛の影響で多くの店で来店数が激減、また、国や自治体の営業自粛の要請を受けて休業する店も続出しました。

アルバイトができなくなったことで、収入が無くなり生活に困窮する留学生が続出していると、ニュースにも取り上げられています。

出典:NHK NEWSWEB 2020年6月2日付
“新型コロナで帰国できず 困窮する外国人留学生に支援広がる”

緊急事態宣言の解除を受けて、日本では経済活動などが再開していますが、外国人留学生の中には帰国できず、生活に困窮している人がいます。今、こうした留学生を支援する動きが広がっています。
南米のコロンビアでは新型コロナウイルスの影響で、ことし8月末まで国外からの空の便を制限する措置が取られていることから、今もコロンビア人留学生ら46人が日本から帰国できずにいます。
こうしたことから、都内にあるコロンビア大使館では先月中旬から、留学生らに企業などから寄付されたお菓子やマスクを送る支援を行っていて、これまでに40個余りが届けられました。

日本語学校はどうなっている?

新型コロナウイルス感染拡大の影響で日本語学校は深刻な打撃を受けています。

4月期の外国人留学生のほとんどが入国できていないうえ、この後7月、10月の入学予定の生徒も先行きが不透明な状況の中で大幅に減少しました。

生徒数がこれまでの1割に満たない、という日本語学校もあります。

一方で、授業を行う教育の現場でも混乱が生じています。

日本語学校によってはソーシャルディスタンスの取り組みとして、オンライン授業を取り入れているところもありますが、オンライン授業のやり方に慣れていないこともあり、思うように授業が進まない、という問題を抱えています。

外国人労働者の状況は?

外国人労働者の雇用という観点でも、新型コロナウイルス感染拡大の問題は日本全体に大きな影を落としています。

現在、全国でおよそ25万人の外国人が技能実習生として働いていますが、今回の新型コロナの影響で、受け入れ先の経営悪化により技能実習生に対する雇止めが問題になっています。

加えて今年の4月から制度を利用して入国する予定だった技能実習生は来日することができず、逆に介護や農業などの職種では人手不足が深刻化するなど、制度のひずみが浮き彫りになっています。

政府の対応は?

新型コロナウイルス対策として、政府は様々な対応を行ってきました。

特に日本語教育業界に関連するところでは、外国人留学生に対する支援として、

  • ・学生支援緊急給付金(アルバイト収入が減って困っている学生への給付金)
  • ・雇用調整助成金(アルバイトを休んでいても、お金が給付されるようにする支援)
  • ・在留資格の申請の期間を延長
  • ・在留資格の認定証明書の有効期間の延長
  • ・国民健康保険料の減額や、支払いの免除
  • ・公共料金の支払い猶予
  • ・公営住宅等の入居者等への柔軟な対応
  • ・在留資格の審査結果の交付期間の延長 など

といった取り組み、制度を打ち出して柔軟な対応を行っています。

文部科学省:日本に留学中の外国人学生の皆さんへ <外国人留学生向けの利用可能な制度一覧>
首相官邸:新型コロナウイルス感染対策本部

また、他国からの入国規制については、段階的ではありますが、緩和の動きが出てきました。

出典:NHK NEWS WEB 7月2日付
“日本への入国制限緩和 台湾やシンガポールなど検討へ 政府”

日本への入国制限措置の緩和をめぐり、政府は、第一弾として合意したベトナムなどに加えて、感染状況が落ち着いている台湾などについても、ビジネス関係者らに限って往来を認める方向で、今月中にも協議を開始する検討に入りました。
新型コロナウイルス対策である外国人の入国制限措置をめぐり、政府は、感染状況が落ち着いている国や地域からの入国を段階的に認める方針で、第一弾として、ベトナムやタイなど4か国と協議を始め、ベトナムとは制限を緩和していくことで合意しています。

日本語教育業界はこれからどうなる?

新型コロナウイルスの感染拡大厳しい状況が続いていますが、決して悲観的なことばかりではありません

今後の日本語教育業界がどのようにかわっていくのかについて、予測を含めてまとめました。

外国人留学生はいなくなる?

日本に在留している外国人留学生の多くは、日本語の授業が思うように受けられず、アルバイトもできなくなって大変厳しい環境に置かれています。

今後の見通しが立たないなかで、どのような思いでいるのでしょうか。

Guidable株式会社が独自で行ったアンケートによると日本に在留する外国人の6割以上が「母国に帰りたくない」と回答しています。

出典:Guidable株式会社 プレスリリース 3月30日付
“日本に在留する外国人の6割以上が「母国に帰りたくない」、Guidable「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する意識調査」”

Guidable株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:田邉政喜)は、在留外国人を対象に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する意識調査」を2020年3月26日に実施、調査結果を公開しました。調査の結果、日本に在留する外国人の66%が「母国に帰るよりも日本に残りたい」と考えているほか、大規模スポーツイベントの延期について41%が「仕方ない」と考えていることが明らかになりました。

日本語学校はどうなる?

日本語学校も、外国人留学生が減少し、厳しい状況に置かれていますが、入国規制が緩和され、留学生の入国手続きが再開されれば、学校の運営も持ち直していくと考えられます。

また、留学生の出身国の割合が2番目に多いベトナムの入国規制が緩和されましたので、早い段階での授業の本格的な稼働も加速していくでしょう。

一方で、新型コロナ感染拡大の第2波を警戒してソーシャルディスタンスの取り組みが社会全体で進んでいます。

3密(密閉・密集・密接)を避けるためには、これまでよりも教室に入る生徒の人数を減らさなければならないため、対面授業と合わせてオンライン授業の取り組みも積極的に取り入れる日本語学校が増えてくることが予想されます。

日本語教師の求人はどう変わる?

日本語学校で授業を思うように行えない状況が続いたため、日本語教師の求人情報も以前と比較すると募集件数が減少していましたが、再開の動きとともに求人が戻りつつあります。

日本語教師の人数はコロナの前でも人手不足の状況が続いていたため、今後も売り手市場であることに変わりはないと思いますが、先ほど述べた日本語学校の対応を見る限り、今後はオンライン対応のスキルを求められる可能性が考えられます。

日本語を教えるスキルが必要なのは当然ですが、対面授業に加えて、オンライン授業にも対応できるスキルがあれば、より日本語教師として求められる可能性は高くなるでしょう。

今から日本語教師を目指すべき?

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日本語教育業界の現状を見ると、これから日本語教師を目指そうと考えている方にとっては不安に思う方も多いと思います。

ですが、結論から言うと、今から日本語教師を目指そうと考えている方は、日本語教師になるための行動をできるだけ早く起こすことをオススメします。

では、なぜ日本語教師を目指す行動をすぐ起こすべきなのか、その理由をお話しします。

日本語教師の需要は今後も増加する!?

新型コロナウイルス感染拡大の影響で日本語教育業界は一時的に大きな打撃を受けていますが、長期的な視点で見ると、日本語学校と日本語を教える日本語教師のニーズは今後も高い状態を維持していくと考えられます。

その背景には、日本の高齢化が加速するなかで、生産年齢人口(生産活動の中心にいる人口層のことで15歳以上65歳未満の人口)を維持するには外国人の労働力が不可欠となっている、という構造的な問題があります。

2019年の調査では、日本に在留する外国人の人口は過去最高の293万人に達しました。
新型コロナウイルスの影響で一時的に減少することはあっても、国内の産業の多くは外国人労働者の労力に頼らなければ維持できないため、政府は外国人を受け入れる政策を維持していく必要があります。

そうなれば、日本語を母語としない方に日本語を教える日本語学校と日本語教師の必要性は、今後も高まっていくと考えるのが必然と言えるでしょう。

資格取得後の状況を予測する

これから日本語教師を目指したい方がすぐに日本語教師になれるか、というとそうではありません。母語を日本語としない外国人に日本語を教えるためには専門知識と技術が必要になります。

現在、一般的な日本語学校で日本語教師になるためには、次の3つの資格のいずれかを取得していることが求められます。

  • ・大学または大学院で日本語教育を専攻し、必要な単位を取得する
  • ・日本語教育能力検定試験に合格する
  • ・文化庁に届け出が受理された420単位時間日本語教師養成講座を修了し、かつ学士の単位を有する

大学で学士を取得するには最低でも4年間、大学院では2年間通学する必要がありますし、日本語教育能力検定試験は、毎年1回しか行われず、試験の内容も日本語教育関する理論全般から出題されるため、簡単に合格できる試験ではありません。

最も多い資格の取り方としては、日本語教師養成講座を修了する方法があり、日本語教師養成講座では最短で半年の受講期間が必要です。

今後、新型コロナウイルスに対する様々な対策や取り組みが進んでいくと思いますので、半年の期間があれば、日本語学校と外国人留学生の環境も今より改善している可能性が高いと思います。

そう考えれば、日本語教師になるための行動はできるだけ早く起こすべき、ということになります。

国家資格化される前に

これから日本語教師を目指す方が、できるだけ早く起こす行動を起こすべきもう一つのポイントとして、日本語教師の国家資格化の動きがあります。

現在、文化庁では日本語教師の国家資格化の準備を進めていますが、新たに加わる資格の要件の中に、4年制大学の学位の取得が盛り込まれる可能性が高くなっています。

参考リンク:コラム 日本語教師は国家資格になる?

そうなると、これまで日本語教育能力検定試験に合格者は、学士を持っていなくても日本語教師の資格とみなされていましたが、日本語教師が国家資格化されると、日本語教育能力検定試験に合格するだけでは、資格の要件が満たされなくなってしまいます。

一方で、国家資格化前にこれまでの日本語教師の資格を持っていれば、経過処置として国家資格を取得できる方向で調整が進んでいます。

そのようなことから、現在、日本語教師になることを目指している方は、国家資格化される前に、できるだけ早く日本語教師の資格を取得しておくべきでしょう。

これから日本語教師に求められるスキルとは?

また、これから日本語教師を目指す方に、今後必要となるスキルを加えるとすれば、日本語教育の専門知識や資格と合わせて、オンライン対応のスキルです。

先ほどアフターコロナの日本語学校対応でもお話ししましたが、これからは対面授業とオンライン授業が並行して行われる学校が確実に増えていきます。

オンライン授業では、対面授業とは違った相手に伝える難しさもありますので、今のうちにオンラインでもわかりやすい絵教材や、発音、口の動きなど、学習者にうまく伝える方法を身に着けておくべきでしょう。

まとめ

新型コロナウイルス感染拡大により、日本語教育業界は大きな影響を受けています。
外国人留学生が日本に入国でない状況が続き、また、日本に在留している留学生もアルバイト収入を絶たれて生活が困窮するといった厳しい環境に置かれています。

緊急事態宣言解除後も、新型コロナ感染拡大の第2波の可能性がくすぶるなかで、学校運営の再開を進める日本語学校も、対策に追われる日々が続いています。

先行きが不透明な中で、これから日本語教師を目指す方にとっては、今後どのよう行動をとるべきか、悩んでいる方も少なくないと思います。

一方で、長期的な視点で見れば、日本における外国人の労働力は今後も必ず必要となるため、日本語学校と日本語教師のニーズは、今後も高い状態を維持すると考えられます。

それに加えて、日本語教師の国家資格化の準備も進んでおり、日本語教師が国家資格化されると、4大卒の条件が付加される可能性が高いので、特に日本語教育能力検定試験に合格して、日本語教師になることを考えている方は、国家資格化前の今がチャンスと言えます。

ですので、コロナの影響はまだ続くと思いますが、これから資格をとって日本語教師を目指す方はできるだけ早く行動をすることをオススメします。

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