日本語の先生になろう。

これからの日本語教師セミナーレポート〈後半〉

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2020年3月31日(火)

Category:コラム

日本語教師の新資格の動きが注目されている中、三幸日本語教師養成カレッジでは「これからの日本語教師セミナー」を開催しました。その様子をライターさんにレポートしていただきました。今回は後半です。


後半では、2つ目のテーマ、「その資格を得た日本語教師にどのような活躍の場があるか」のお話です。前半でもキーワードとなっていた「多様な現場」で、実際に日本語教育に携わっている先生、講座修了生のお話を中心にお伝えします。

 

年少者対象の日本語教育の現場から

 

三幸日本語教師養成カレッジの養成講座で講師を務める人見美佳先生は、「年少者」と呼ばれる日本語を母語としない子どもや大学生を対象とした日本語教育を研究され、年少者日本語教育の研修会・ワークショップも数多く開催しています。

 

人見先生によると、「年少者」といっても、一括りで語るのは難しいとのこと。

 

「日本語指導が必要な年少者の中には、小学生、中学生、高校生はもちろん、未就学の子どももいます。また、日本の保育園に通ってはいるものの、家庭では日本語はまったく使わないという子どもいます。さまざまな事情と背景を持つ子どもたちが、どうやって日本語を身に付けるかということは、言い換えると、日本語を使って、彼ら、彼女らが、これからの人生をどう生きていくか、ということを考えていくことになります。

 

日本という社会の中で、彼らが将来、どういう立ち位置で生きていくのかを考えながら日本語を教える、日本語学習を支援していくことは、とても責任が重く、大変なことではあるけれど、その一面、楽しいことでもあります。

 

年少者教育の対象年齢の幅は広く、背景もさまざま。それだけに、教える側にも多様な経験や背景を持つ人材が必要とされ、そういう意味でも、日本語教育の多様性は広がっていると実感しています。」

 

▲教育実習の中で、日本語教育現場への見学の機会がある。

 

留学生、生活者の日本語教育の現場から

 

次に話をしてくれたのは、三幸日本語教師養成カレッジの修了生、小平悠太さんと栁亜希子さんです。

 

小平さんは2019年4月から10月までの半年間、三幸日本語教師養成カレッジで学び、同年10月の日本語教育能力検定試験に合格。現在、日本語学校で留学生を対象とした日本語教育に携わっています。また、栁亜希子さんは、2019年10月に受講を開始し、同年10月に受講修了。修了後は地域のボランティア教室と、「技能実習生研修センター」で技能実習生※1を対象とした日本語教育に携わっています。

それぞれ異なる日本語教育の現場で教えているお2人ですが、現場の話に入る前に、なぜ、三幸日本語教育カレッジで学ぼうと思ったのか、きっかけと背景について伺いました。

 

※1外国人が技術移転のために日本に働きにくる制度。日本に来てから1ヶ月間研修を行う。

参照:パンフレット「技能実習法が成立しました!」(平成28年11月28日公表)

 

小平さんはニュージーランド(以下、NZ)にワーキングホリデーで滞在し、日本語を学びたいNZ人とランゲージエクスチェンジを経験したことから、帰国後、本格的に日本語教師を目指したということ。日本語教育について学ぶのは初めてで、講座を選ぶ際、受講生が少人数で、しかも480時間と、他校に比べて多く、手厚い指導が受けられると思ったことから、三幸を選んだということでした。

 

一方、栁さんが日本語教師を目指そうと思ったきっかけは、新聞で、両親と一緒に外国から来たものの、日本語が話せず、学校には居場所がなく、やがて不登校になり、犯罪に加担してしまった受刑者の記事を読んだことだったそう。そうした人を少しでも減らしたいという思いから、日本語教育を学ぼうと決めたということでした。他校も見学に行ったそうですが、日本語学校(法務省告示校)の留学生を対象とした実習をメインにしているところが多い中で、三幸日本語教師養成カレッジは、留学生だけではなく、生活者や年少者、技能実習生など、様々な学習者に焦点を当てたカリキュラムであることに魅力を感じたそうです。

 

留学生対象の日本語教育——教育実習と実際の現場の違いは?

 

三幸日本語教師養成カレッジの480時間カリキュラムの中でも、特に特徴的なのが教育実習で、日本語学校を想定した留学生対象の内容と、「生活者」といわれる地域で生活する外国人を対象とした内容の大きく2つの柱で組まれています。留学生対象の実習は、提携する日本語学校で行います。実習の実際の様子について小平さんは、次のように語ってくれました。

 

「留学生対象の実習は、45分を2人の受講生が半分ずつを担当する形で行いました。1人担当時間は約22分で、全部で2回、やりました。日本語教育を学ぶこともそうですが、教育実習というのも初めて経験することだったので大変でした。いちばん苦労したのは、教えるテーマや文型は決まっているのですが、それをどういうアプローチで教えるか。その部分を自分一人で考えるのが最初は大変でしたね。」

 

柳さんも、半年コースだったため、座学で理論を学ぶ授業と並行して実習があったことが大変だったそうです。

 

「実習の事業スケジュールが結構タイトだったので、教案を書くのが大変でした。また、留学生対象の実習では、まだ習っていな語は使わないという縛りがあって、厳しかったですね。生活者対象の授業が先にあったのですが、そちらはそうではありません。その違いは結構、大きいと感じました。」

 

実際に今、日本語学校の現場で教えている小平さんに、実習と実際の現場で教えることの違いはどんなことかと尋ねると、担当する時間数が多いことだそう。

 

「実習では1コマ45分を2人で分担しましたが、実際に現場に入ったら、45分を4コマ、つまり180分を1人で担当することになりました。4コマ分の教案を考えるのは、とても大変です。ただ、周りに経験豊富な先生が多いので、わからないところは聞いて教えていただけるのは恵まれていると思います。」

 

大変な中でも続けてこられている理由を聞くと、それは「学習者の成長」だといいます。

 

「毎週、どんどんコミュニケーションの質が変わってくるのがわかります。10月から担当したクラスは、本当にゼロ初級(日本語を初めて学ぶレベル)で、ひらがな、カタカナから入りました。半年ほどたった今は、『先生、どこに住んでいるのですか?』とか『先生、ご飯を食べに行きませんか』など、軽い雑談ができようになっています。成長が目に見えて、教える側としてもやりがいを感じますね。」

 

▲実際の教壇実習の様子

 

生活者や技能実習生対象の日本語教育——教育実習と実際の現場の違いは?

 

三幸日本語教師養成カレッジの実習のもう一つの柱「生活者対象」の実習とは、どのようなものなのでしょうか。

 

栁さんは、生活者対象の実習があることが、三幸日本語教師養成カレッジを選んだポイントだったそう。実際に、受講した感想を聞きました。

 

「技能実習生対象の授業は、実際に授業現場を見学させてもらいました。生活者の実習は、実際に教えたのですが、留学生対象の場合と違って、習っていない語は使わないということはなく、比較的自由でした。留学生と生活者、両方の実習を経験したことで、それぞれの現場では求められる日本語が違うということがよくわかりました。」

 

小平さんも、「自由度が高く、何をやってもよいのですが、それが逆に難しかった」と語りました。ただ、学習者は、皆、明るくて、積極的に授業に参加してくれる人が多く、楽しい経験もできたということ。

 

実際に、今、研修センターで、技能実習生の日本語教育にあたっている栁さんに、現場の様子をお聞きすると、

 

「彼らは留学生と違い、技能を自国に持ち帰ることが目的で、日本語能力を向上させることがゴールではありません。また、来日時期もレベルもさまざまで、上に合わせると難しい、下に合わせると簡単すぎるという声があがり、どこに基準を合わせたらいいか、悩みますね。」

 

なかなか見える形での手応えは感じにくいようにも思えますが、どのような点にやりがいを感じているのでしょうか。

 

「もともと日本語教師を目指したきっかけが生活者の人を応援したいということだったこととも関連すると思うのですが、技能実習生の場合、1カ月という短い期間ではありますが、その中で、少しでもいいので、日本語を覚えて、日本での生活になじんだり、職場に入ったときに日本人と会話ができるようになってくれればいいなと思って教えています。明るく、よく話す実習生も多いので、授業は活気があり、楽しいですよ。」

 

▲教育実習の中で技能実習生研修センターの見学を行った。

 

・・・・

「多様な日本語教育の現場」と一口で言っても、見てきたように、出身国や学習目的、ニーズなどによって教えるべき日本語が異なり、さらに、学習者側のモチベーションや興味といった要素にもグラデーションがあるようです。

 

将来、どのような形で日本語教育に携わるのか、実習でさまざまな現場に入って、その違いを肌で感じてもらい、選択の幅と視野を広げてほしいという思いから、留学生と生活者の2本柱で実習を行なっている三幸日本語教師養成カレッジ。課題ややりがいも含めて、実習を経験し、今、各現場で日本語教育を行なっている方の話を聞いて、より具体的にイメージが湧くようになったように思いました。セミナー終了後も、参加者の方が熱心に質問をされている姿が見られたのが印象的でした。

 

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